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JRFUメンバーズクラブ会報誌「JAPAN ! JAPAN !」第80号

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「ハーフタイム」~村上晃一の会報誌こぼれ話~

節目となる80号は、ラグビーワールドカップ2019™(RWC)日本大会開幕直前に会員の皆さんのお手元に届くことになった。表紙は、トンプソン ルーク選手と、姫野和樹選手。姫野選手の怪我が心配されたが、どうやら開幕には間に合うようで、胸をなでおろしている。巻頭の特集は、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチのRWC最終登録メンバー発表記者会見。選考に漏れた選手について配慮しながら、選考方針について丁寧に説明されている。今回は締め切りの都合上、9月6日の日本代表対南アフリカ代表戦の情報は掲載されていないが、スコア(7-41)で感じるよりも、スクラム成功率、ボール保持時間、ディフェンス突破などの数値は良く、選手達は手応えをつかんだようだ。なにより、9月20日のロシア戦に向けて気を引き締めることができる敗戦だった気がする。

今号は、吉田宏さん、小林深緑郎さんという経験豊富なジャーナリストの注目選手などRWC日本大会の見どころ解説が多いが、巻末インタビューでは、日本代表フランカー、ピーター・ラブスカフニ選手が登場する。PNCのフィジー戦で日本代表デビューを果たし、デビュー戦でいきなりキャプテンを務めた新しい戦力で、他国からすればあまり情報がなく怖い存在だろう。

このインタビューは、7月、宮崎での合宿中に行われた。内容は誌面を読んでいただくとして、取材後に他の選手たちにもコメントを聞くことができた。筆者は4年前の宮崎合宿も取材している。その頃と比べると選手の表情が明るく、言葉数も多いと感じた。4年前は猛練習で疲れ果てた表情が印象的だったが、今回のチームは猛練習の中で選手同士がコミュニケーションをとり、自分たちで課題を修正しながらチームを作っている。だからこそ、言葉が豊富なのではないかと思った。

その中で長い時間話を聞けたのが稲垣啓太選手だった。「以前の日本代表のスクラムは今ほど一人一人の役割が明確ではありませんでした。たとえば、組む直前に後ろ5人が膝を上げるタイミング、あらかじめ、芝生にスパイクのポイントをかけておくことなどです。なぜそれが大事かと言えば、スクラムを組む前にポイントをかけていないと、膝を上げたときにもう一度ポイントをかける作業が生まれ、その間にわずかですがプロップとフッカーのお尻と肩のコネクションがずれるのです。そういったディテールは何度も(試行錯誤を)繰り返してたどり着きました」

稲垣選手は少し話すと、必ずといっていいほど、「なぜ、そうなるかといえば」と説明を加えてくれる。話がとても分かりやすいので、多くの記者が彼の言葉に耳を傾ける。囲み取材がなかなか終わらないことが多い。この日もそうだったのだが、筆者はどうしても稲垣選手に伝えなくてはいけないことがあって最後まで粘って待っていた。実は、取材前、宮崎の街中で稲垣選手の関東学院大学時代の恩師である春口廣さんに会ったのだ。

春口さんはラグビースクールの指導で宮崎を訪れていた。少し話すことができた。「稲垣がさあ、母校(新潟工業高校)のグラウンドを芝生化するということで、寄付したでしょう?感激しちゃってさ。素晴らしいよね。よろしく言っておいてよ」。稲垣選手は新潟工業高校のグラウンドの芝生化のための費用を寄付した。9月8日にはグラウンドのお披露目式が行われ稲垣選手も参加。その時、報道陣に芝の効用について語っている。「何より怪我のリスクが減る。親御さんがジャージーを洗う負担も減ると思います」。優しいコメントである。

春口さんの言葉を伝えると、「えっ、春さんが? 春さん、会ってないなぁ」と屈託のない笑顔を見せた。いかつい顔つきとは裏腹に後輩たちや恩師を思いやる優しい男なのだ。RWC日本大会では稲垣選手が世界のラグビーファンからも注目される存在となり、「ガッキー」の愛称が世界に広まる。そんな想像を膨らませると楽しくなってくる。開幕が待ち遠しい。

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