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第3回 : 田島 卓也 日本代表チームドクター
(2007.6.11)

 日本代表チームには、15名のスタッフがいる。大きく分類すれば、コーチングスタッフ、メディカルスタッフ、マネジメントスタッフの3つ。

 ジャージには袖を通さないが、彼らもまた日本代表として世界と戦う戦士である。彼らのサポートがなければ、チームは機能しないばかりか、一つにならない。彼らが、日本代表の勝利のために全てを尽くすからこそ、選手がグラウンドで最高のパフォーマンスを発揮できる。

 そんなチームの裏側に生きるジャージを纏わぬ戦士たちをここでは紹介していきます。第3回は、田島卓也 日本代表チームドクターです。


 ラグビーは小学校1年生のときに、長崎ラグビースクールで始めました。当時、小児喘息を持っていたので、それを克服するために、親に連れて行かれたのが最初です。あの頃は、週に一回の貴重な日曜日を奪われて、やらされている感じでした。中学時代もそのまま長崎ラグビースクールに所属していました。

 ラグビーが面白くなり始めたのは、高校に入ってから。長崎北高校に進学したのですが、チームが強くて、花園という目標もありました。そういった環境に入ったことで、ラグビーが楽しくなっていきました。

 1年のときは、先輩たちが花園に出場したので、応援しに花園に行きました。結局、花園に行ったのはこの時だけ。2年の時から試合に出るようになって、九州大会2位ブロック優勝。全国大会予選決勝では長崎北陽台に敗れ2位。3年時には、レギュラーとして出場したんですが、全国大会予選決勝で諫早農業に敗れ、花園に出場することはできませんでした。ポジションは、基本的にLOで、HOもやりました。

 卒業後の進路については、父の影響もあったのですが、自分もラグビーをしていた中で、ケガをしたり、仲間たちがケガをしていたりというものを見ていたので、ドクターとしてそういう場所に関わりたいと思い、最初からスポーツ医学のドクターを目指し、医学部を受験しました。進学した宮崎医科大学(現:宮崎大学)でもラグビーは続け、大学4年次にはキャプテンも務めました。  その後、医師となり、4年ほど前からラグビー日本代表チームドクターとして携わることになりました。

 チームドクターの業務としては、大きく3つ
・ 外傷傷害の管理と治療
・ コンディショニングのチェックと管理
・ ドーピングコントロールへの対応
が上げられます。

 一日のスケジュールとしては、毎朝、選手のコンディショニングチェックを行い、体重、心拍数を確認します。食事の際に声を掛けて、選手の状態を見ながら、食事量のチェックも行います。もちろん、食事のメニューも確認し、何か足りない部分や変更点があれば、ホテルへ依頼します。

 練習中は、メディカルサポーターとして活動し、けが人が出れば、チェックし、治療を施します。また、ケガ人に対しては、トレーナーと協力し、リハビリメニューを作成し、早くトレーニングに戻れるようにします。

 夜は、夕食後にその日、痛みがあった選手、体調不良の選手を全員チェックし、必要であれば、治療します。トレーナーのケア終了後、メディカルミーティングを実施し、報告書を作成して、翌朝、コーチに報告するというのが一日のスケジュールです。  我々の仕事は、病院で勤務するドクターとは全く異なります。施設が整っている病院とは違って、正確で迅速な診断、情報収集能力、コミュニケーション能力、もちろん診断能力を含めて医師としての総合力が必要だと思っています。自分の力と経験でベストな判断をしなければなりません。

 休ませることは誰でもできます。それをラグビーができるか、できないかの正確な判断をして、なるべくやらせる方向で考えます。同じ打撲でも、ラグビーができる打撲とできない打撲がある。もちろん、駄目な場合は、絶対に止めます。

 私はラグビーの経験もありますので、いろんな場面に活かされていると感じていますし、私のアドバンテージだとも思っています。  日本代表チームの選手たちは、ラグビーをするものからして見れば、みんな雲の上の存在。そんな選手たちと接することが出来て、誇りを感じます。ドクターとしてみれば、一流の選手たちを診られる機会を与えてくれたことを光栄に思います。

 日本代表のチームドクターとしての難しさとしては、選手たちは、体に対して非常に気を遣っているので、100%じゃないとやりたがらない選手も中にはいるんです。そういった選手を早く復帰できるようにコミュニケーションを取っていかなければなりません。大切なのは、いかに選手との信頼関係を築くか。私は、やはり、接する時間を多くすることだと思います。私は、治療の時間は、トレーナールームにいるようにしています。そこで、雑談をしたり、体の相談を受けたりして、選手の声を聞きだすことで信頼が生まれると思います。

 また、各チームの連携の部分ですかね。同じケガでも各チームで対応が異なる場合があるので、そういった部分を各チームと連絡を取り合いながら、対応していく必要があります。それでも、これまで4年間代表チームに携わってきたことで、チームドクターの皆さんからも大分任せてもらえるようになりました。

 今、JKが率いる日本代表チームのドクターとして感じているのは、ラグビー先進国と日本とのケガに対する考え方が違うということ。体の状態に加え、精神的なタフさが求められています。直近の例を挙げれば、PR山村のフェースガード。JKに言わせれば、つけて出れば狙われる。我々から言わせれば、予防のためにつけさせたいとなる。この部分をいかに、JKに沿う形で持っていけるかが、我々、メディカルチームに求められていると思います。

 ドクターとして関わるラグビー日本代表チームは、自分を高めるための存在です。スポーツドクターとしてトップレベルの選手たちを見ることができる、自分の人生にとってまたとない機会です。そして、今秋のワールドカップは夢の場所。非常に興奮しています。ベストパフォーマンスでピッチに立たせるのが我々の仕事。全力で臨みます。


<プロフィール>
田島 卓也(たじま・たくや)  1972年11月23日 長崎県生まれ

小学校一年次に長崎ラグビースクールでラグビーを始め、長崎北高校へ進学。高校時代はLOとして活躍し、2年次に九州大会2位ブロック優勝、3年次に全国大会予選準優勝。高校卒業は、医師を志、宮崎医科大学(現:宮崎大学医学部)に進学。大学卒業後、医師となり、病院勤務の傍ら、様々なカテゴリーの代表チーム チームドクターを歴任。2004年から日本代表チームドクターとして選手たちの絶大な信頼を得る。座右の銘は、「Where there is a will,there is a way.(意思あるところに、道は開ける)」。