日本代表トップページ > スタッフ日記

Pick up Player

第2回 : 太田 正則 日本代表ストレングス/コンディショニングコーチ
(2007.5.30)

 日本代表チームには、15名のスタッフがいる。大きく分類すれば、コーチングスタッフ、メディカルスタッフ、マネジメントスタッフの3つ。

 ジャージには袖を通さないが、彼らもまた日本代表として世界と戦う戦士である。彼らのサポートがなければ、チームは機能しないばかりか、一つにならない。彼らが、日本代表の勝利のために全てを尽くすからこそ、選手がグラウンドで最高のパフォーマンスを発揮できる。

 そんなチームの裏側に生きるジャージを纏わぬ戦士たちをここでは紹介していきます。第2回は、太田正則 日本代表ストレングス/コンディショニングコーチです。


 私が、ラグビーを始めたのは、中学校3年生のとき、当時、埼玉・行田工業高校監督だった新井さん(新井均 現:埼玉県教育委員会、前U19日本代表監督)に誘ってもらったのがきっかけです。ラグビーに関しての知識は、ほとんどなかったんですが、当時は同志社大学の大学選手権3連覇や、新日鐵釜石の7連覇のときで、TVで見ていてラグビーって凄いスポーツだなと思っていました。

 進学した行田工業では、2・3年と埼玉県大会の決勝で熊谷工業に敗れ、花園には出場できませんでした。それでも、3年の時にオール埼玉に選出され、クインズランド高校選抜と試合をしてMVPをもらいました。
  その後の進路については、いろいろ考えたんですが、高校時代は、本気でラグビーをやった時間が多くなくて、完全燃焼できなかったんです。ラグビーが本当に面白くなり始めたのが、3年生の最後の頃でしたので、高校卒業後も、しっかりとしたところでやりたいと思って三洋電機に進みました。三洋を選んだのは、高校時代、行田工業から三洋電機に進んだOBが教えに来ていたということや、新井監督からも話をしてもらって経緯などもあって、お世話になることに決めました。

 三洋電機では、10年間選手としてプレーしました。最後の2年間は、プレイングコーチも兼任していました。プレーヤーを引退してからは、7年間フィットネスコーチとしてチームに携わりました。コーチの経験は、ほとんどなかったのですが、私自身、体の小さなFLで、フィットネスには自信があったので、飯島さん(飯島均:現・三洋電機ワイルドナイツ コーチ)が、“選手として実績がある人間がやったほうが、選手も納得するだろう”ということで声を掛けてくれたんだと思います。
  それからは、東海大学の学外スタッフとして指導の場に立ったり、三洋電機が、NZ・カンタベリー州とアドバイザリー契約を結んでいたこともあって、NPC(ANC)カンタベリーやクルセーダーズの本拠地、ラグビーパークで現ニュージーランド代表フィットネスコーチのアシュレイ・ジョーンズやカンタベリーのフィットネスコーチ グレック・トンプソンの下で毎年経験を積ませてもらうなどして、コーチとしてのキャリアを重ねました。

 コーチングのベースには、私自身の経験があります。私はWTBとして60kgで三洋に入りました。そして数年後に、当時の宮地監督からFLに転向してみないかと言われて、それから、社会人で戦える身体作りのために、何も分からず独学でウエイトやフィットネスを勉強しました。次第に自分の身体が変わったことで自信がつき、トレーニングが面白くなってきたんです。60kgの身体が、筋肉がついて85kgになり、社会人で通用する身体を、自分自身で作れた。自分自身で体現できたんです。自分のような体の小さい人間が出来たという経験を活かし、日本人のような、世界に比べたら小さな選手が、戦えるようなフィジカルを作ってあげたいというのが、私の目標です。

 日本代表のコーチ就任に関しては、太田GMを始め、いろんな方との縁があってお話をいただいたのですが、三洋のコーチを終えてから、一年間ラグビーを離れてみて、ラグビーが本当に好きだと再認識しましたし、私自身を成長させてくれたラグビーに恩返しをしたいと思うようになりました。
  日本代表のフィットネスコーチという、せっかく、もらったチャンスを逃したくないと思い、ラグビーに専念できる環境に身を置くことにしました。
  これまでお世話になった方々への恩返しが、日本ラグビーのサポートという形で出来ますので、本当に嬉しく思います。

 コーチとして、日本代表を見た場合、選手たちの体格は、徐々に世界に近づいてきていると言えます。ただ、それが試合になるとコンタクトの部分で劣ってしまっているのを、感じています。日本は、世界に通用する俊敏性があって、スキルも高い、ただ、試合で出せていないのです。今の選手たちだって、誰もが羨むような素晴らしい素質を持っているのに、上手く試合に繋がっていない選手が沢山いるんです。潜在的な部分をどう出していくかが、これからの課題だと思っています。選手たちの身体の中身を変えてあげたいと思っています。私が考えるフィットネスの根幹は、コア(体幹)です。コアが全ての動きに通じています。それと柔軟性を、どうプレーに関連づかせるかを追及して行きたいと思っています。

 私の役割は、JKの求める、早く・低く・激しくというラグビーを実現するために凄く重要だと認識しています。そのために、マーティン・ヒューメ(日本代表フィットネスコンサルタント)と密に連絡を取り合って、JKのラグビーに必要なフィジカルをW杯までに仕上げることが、私の仕事です。現状、まず我々が設定した第一段階のレベルには到達しています。ただ、私の中では、まだ70%ぐらい。これから20〜30%更にアップしたいと思います。

ストレングス&コンディショニングコーチの業務としては、
・ 選手のコンディショニングチェック
・ 練習のセットアップ
・ ウォームアップ
・ クールダウン
・ リカバリートレーニング
・ ストレッチ
・ ウエイトトレーニングの実施と、プランニング
・ ランニングフィットネスの実施と、プレンニング
・ 各種測定
・ 面談
など、多岐に渡ります。
  面談では、測定結果に対して、世界水準との比較や選手に対する目標値の設定。そして、世界水準により近づけるために、トレーニングセッションのプランニングを行います。

 我々、フィットネスコーチにとって大切なことは、選手が一番嫌な事、しんどい事をやるので、どれだけ選手の気持ちを掴んで、乗せてあげられるかだと思います。私は、ラグビー出身者なので、ただ体を温めるウォーミングアップではなく、その日に行うトレーニングの基礎の部分をウォーミングアップに入れられますし、ミーティング等で出たキーワードを実際のトレーニングに散りばめる事が出来ます。ウォーミングアップからスムーズにトレーニングに移行することが出来ます。そう言った部分は、私の強みだと思っています。

 私にとって、日本代表は、“誇り”です。プレーヤーとして日本代表を目指していたときは、絶対になってやろうと思っていながらも、果たすことが出来ない、とても高いところにあるものでした。
  それが、コーチとして、日本代表チームに関わることになった今は、預かった選手たちを世界にどれだけ近づけるかということを、常日頃から考えています。
  また、この機会を一度しかない人生でもらった、最大のチャンスだと思っています。このチャンスをしっかりものにして、チームの目標であるW杯の決勝トーナメント進出を手にしたいと思います。私にとって、日本代表という存在は、今はかけがえのないものです。自分のチーム、ファミリーだと思っています。

 これから臨むW杯は、全てを賭けて目指すべきもの。W杯の舞台で世界水準のフィットネスを持った選手たちが、JKのラグビーを体現して、世界に勝つイメージは持っています。


<プロフィール>
太田 正則(おおた・まさのり)  1969年8月18日 埼玉県生まれ

埼玉・行田工業高校でラグビーを始め、2・3年次に埼玉県大会決勝に進出。3年次に全埼玉選抜に選出され、クインズランド高校代表と対戦し、第2戦MVPを獲得。高校卒業後は、三洋電機に入社。10年間プレーヤーとして活躍。プレーヤー引退後、7年間同チームのフィットネスコーチを担当。その後、7人制日本代表のコーチなどを歴任し、2006年から日本代表チームフィットネス・ストレングス担当コーチとなる。今やJKジャパンの礎に築くためになくてはならない存在である。現役時代のポジションは、FL・WTB。代表歴は、関東代表、日本選抜。