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JRFUメンバーズクラブ会報誌「JAPAN ! JAPAN !」第62号

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「ハーフタイム」~村上晃一の会報誌こぼれ話~

日本代表、サンウルブズ、セブンズ日本代表など情報満載の今号だが、海外のラグビーを良く知るファンの皆さんには、たまらないのが宗像サニックスブルースのカーン・ヘスケス選手とカーロス・スペンサーBKコーチの対談だろう。昨年のラグビーワールドカップの南アフリカ戦で逆転トライをあげたヘスケス選手は、一躍世界中の人々が知る有名選手になったが、カーロス・スペンサーは、世界のラグビー史でも特別な輝きを放つ選手だった。愛称は「キング」。まさにフィールド上では王のように振る舞い、変幻自在のプレーで観客を魅了したが、今回の取材では意外な一面をのぞかせた。まずは、宗像サニックスに入団した経緯を聞いてみると……。

もちろん、英語で話し始めたスペンサーBKコーチ。宗像サニックスとの最初のコンタクトから、いかにこのチームを好きになり、もう一度来たいと思ったか、そしてこのチームにはどれだけの可能性があるのか、話し続けたのだ。通訳の方がたまらずに止めたほど。2人のやりとりを見て、ヘスケス選手は大笑い。かえって和やかにスタートできたのだが、まじめに語り続ける姿を見て、現役時代の自由奔放なプレーぶりとは正反対の指導者であるように感じた。ヘスケス選手も「コーチとしては妥協しない人」と語っている。2011年に現役引退後は、南アフリカのライオンズ、キングスなどでコーチとしてのキャリアを積んできた。

現在40歳ながら、その筋肉は鋼のよう。栄養面も気遣いながらトレーニングを続けているようだ。映画俳優としてもスターになりそうな甘いマスクは、現役時代よりもさらに洗練された感じがする。もし、彼のプレーをまだ見たことがないという人がいたら、ぜひネットで検索していただきたい。スーパープレーの数々をたくさん見ることができる。オールブラックスのキャップ数こそ「35」にとどまっているが、それは同時期にアンドリュー・マーテンズという正確無比なプレースキックを誇った名手がいたからで、プレーのインパクトという点では、スペンサーの右に出るものはいない。

スタンドオフの位置で、右に展開したと思ったら、ノールックで左方向にキックを蹴り、スクラムハーフからの難しいパスを受けると、股の下から次の選手にパス、そして、自らも鋭角的なステップワークでタックラーを次々にかわしながらトライを演出する。観客をわくわくさせるファンタジスタだった。スーパーラグビーのブルーズでプレーした時期には、ライバルのクルセイダーズとの一戦で、終了間際にインゴール真ん中に駆け込みながら、わざわざ右コーナーまでボールを置きに行って決勝トライをあげ、難しいコンバージョンゴールを自ら決めて観客を喜ばせることもあった。

しかし、それらは確かなスキルを持っていたからこそできたこと。コーチとして選手に求めるのも正確なスキルと、ラグビーというゲームの深い理解だ。もともと、サニックスのスタイルはグラウンドを縦横無尽に走り回るランニングラグビーだ。そこに、アタックセンス抜群の「キング」がどんな味付けをするのだろう。そして試合後は、ヘスケス選手とともに、たくさんのファンからサインや写真撮影をせがまれるスペンサーコーチが目に浮かぶ。トップリーグ再昇格の宗像サニックスブルースは、グラウンドの内外でファンを楽しまる存在になりそうだ。

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