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JRFUメンバーズクラブ会報誌「JAPAN ! JAPAN !」第58号

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「ハーフタイム」~村上晃一の会報誌こぼれ話~

今号の巻頭インタビューに登場したのは、東芝ブレイブルーパスのリーチ マイケル、廣瀬俊朗という日本代表のキャプテンコンビだった。2012年、13年は廣瀬、2014年、15年はリーチが日本代表を率いてラグビーワールドカップ(RWC)の快挙を成し遂げたわけだ。誰もが認める優れたリーダーだが、RWC直前の7月~8月にかけてリーチは悩んでいたという。このあたりは誌面に出てくるが、廣瀬が的確なアドバイスを送り、リーチは本番では素晴らしいリーダーシップを発揮した。そのリーチが、取材の合間にふと「俺もロブショーみたいになったかもしれないんだよなぁ」と、つぶやいた。それは…。

イングランド代表キャプテンのクリス・ロブショーのことだった。ホスト国のリーダーとして国民の期待を一身に背負ったロブショーは、オーストラリア、ウェールズ、フィジーという強豪ひしめくプールAで苦しみ、決勝トーナメントに進出できない初めてのホスト国チームになってしまった。実はロブショーとリーチは試合の中で同じような選択を迫られている。リーチは南アフリカ戦の最後のPKでスクラムを選択し、チームを勝利に導いた。この判断は、「勇敢」と称賛された。その1週間後、イングランドはライバルのウェールズと対戦し、同点PGのチャンスを得ながらトライを狙って3点差で敗れた。そして、この判断を下したロブショーは酷評されることになる。

シンビン(10分間の一時退場)で一人少なかった南アフリカに対し、千載一遇のチャンスを逃すまいとした日本と、激戦のプールで勝ち点を積み上げ、決勝トーナメント進出を果たさなくてはいけなかったイングランドでは、置かれた状況がまったく違うというわけだ。しかし、もし日本が負けていたら、リーチの判断は勇敢だと言われただろうか?「愚か」と非難されたかもしれない。リーチが胸をなでおろすのは無理もないのである。

しかし、日本代表も決勝トーナメントに進出できなかった。サモア戦でボーナス点を獲得するためにトライをアグレッシブに獲りに行くべきだったという意見がある。リーチは言う。「サモアは強かったです。そんな余裕はなかった」。リーチはチームを勝利に導くために、ある時は勇敢に、ある時は慎重に判断をしたということだ。キャプテンの判断について、南アフリカ戦で先発した2人のロックのコメントが印象に残っている。

「スクラムであれ、ペナルティーゴールであれ、どんな判断と結果でも、グラウンドにいたリーチキャプテンと15人の判断がベストであり、それを信じ、尊重する。それだけでした」(大野均)、「どんなときもキャプテンの判断に従うのみ」(トンプソン ルーク)。ラグビーのキャプテンはチームの命運を左右する重責を背負っている。だからこそ、どんなカテゴリーのチームでもキャプテンになった選手は顔つきが変わる。大人びるのだ。世界と戦い、一段といい顔になった2人の日本代表キャプテンを、しみじみと眺めた。

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